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改正民法について~不動産取引が大きく変わります(1)

今国会で成立公布予定の民法改正法案が、施行は公布の日から3年以内と予想されています。不動産取引に関連する影響も大きいため概要をアップしておきます。

 

一 今回の改正の対象

現行民法は

△第1編 総則

第2編 物権

◎第3編 債権

第4編 親族

第5編 相続

の5編から成り立っています。今回の改正は、第3編の債権法(売買契約・賃貸借契約・請負契約などの13種類の契約及び契約総論等に関する法律)の部分を抜本的に改正するもので、さらに、第1編の総則の一部(法律行為・時効等)を改正することとなります。

 

二 法律行為及び契約の総則的な規定の変更で不動産取引に関連する改正項目

1 民法改正に伴う消滅時効の期間の変更

現行民法は、原則として、債権の消滅時効期間は、権利者が権利を行使し得るときから10年間としていたが、新民法では、この原則に加えて、権利を行使することができることを知ったときから5年間でも時効により消滅するとしました。

 

権利を行使し得るときから10年 → 権利を行使し得ることを知ったときから5年

 

○各起算点と時効期間

【権利を行使できる時】

←——————–10年間——————→(時効完成)

【権利を行使できることを知った時】

↓←—————5年間————→(時効完成)

 

 

三 売買契約書の目的欄と記載と民法改正による錯誤による取消

 

1 錯誤の効果が無効から取消に変更

 

従来、錯誤による意思表示は無効とされてきましたが、新民法のもとでは錯誤による意思表示は取消の対象となります。無効の主張は何時でもできますが、取消権は原則として5年間の行使期間の制限があります。

 

2 動機の錯誤による取消ができる場合が明文化。

 

現行民法の規定は、意思表示それ自体には錯誤がなく意思表示をするに至った動機に錯誤があるという場合についての規定がありません。判例では、動機が表示されている場合は、動機の錯誤も法律要素の錯誤になるものとして、錯誤無効の主張を認めていたことから、新民法では、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反するもの」(「動機の錯誤」)についても錯誤により取消の対象となることが明確にされました。

 

3 動機の錯誤が認められる要件

 

たとえば、

A社とB社との間で土地売買契約を締結したが、その後この土地に土壌汚染があることが判明した場合に、買主B社は、土壌汚染があることが分かっていればこの土地を買うことはなかったと主張して、錯誤を理由としてA社に対し、土地売買契約を取り消すことができるのか?

 

Bの意思表示はこの土地を買うという意思表示であり、意思表示自体に錯誤はありません。錯誤があったとすれば、例えば「Bがこの土地を住宅用地として転売する目的であり、土壌汚染があれば転売目的を達成できない。」という場合には、土壌汚染があるという事実は、この土地を購入する動機に錯誤があったというこになります。土地売買契約に、本売買の目的が住宅用地としての転売にあったこと等の事実が表示されていれば、錯誤による取り消しの可能性がでてくることになります。

 

新民法成立後には、不動産売買契約書等において、「本契約の目的」という条文を設けることが行われる可能性があり、そのような条文が存する場合には動機の錯誤により取消しを主張される可能性を想定する必要が出てくることになります。

 

四 法定利率の変更

 

①新民法施行当初の法定利率は年3%とする。

②以後3年毎に法定利率の見直しを行う。

③見直しの方法は、過去5年間(60ヶ月)の短期貸付利率の平均利率を算出し、その平 均利率がその前の時点の平均利率と1%以上の乖離が生じたときに、乖離率の1%未満 を切り捨て、1%単位で変動させるとの改正があります。

 

五 危険負担制度の変更

~債務不履行解除に帰責事由が不要になることの帰結~

 

危険負担に関する民法第534条が削除されました。

ちなみに民法534条1項は

特定物に関する物件の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、または損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。

とあり

売買の目的物が売主側の責任でなく滅失・損傷した場合は、買主は目的物の移転が受けられないにも係らず代金支払義務があるとの規定です。

したがって特約で排除する必要がありました。

これに対し

新民法は売買の危険の移転時期は引渡時であることを明文化しました。

 

つまり、       引渡↓

←———————————-→    ←——————————–→

引渡前の滅失・損傷の危険負     引渡後の滅失・損傷の危険

担=売主(⇒買主は代金の支     負担=買主

払の拒否可)

 

(1)当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

(2)債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

としました。

 

六 損害賠償の予定に制限規定が設けられます

 

民法第420条第1項後段(当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。)が削除されます。

 

この条項の実務への影響は

420条1項(裁判所は損害賠償の予定を増減できない)を削除したということは理論的には裁判所が損害賠償の予定額を増額することも減額することも可能となるということです。

賃貸借契約において、賃借人が中途解約した場合の違約金規定の有効性等については、既に残存期間賃料相当額を違約金とする条項は公序良俗違反で無効とする判決が存するので実務的な影響はさほど大きなものではないと思います。

 

七 債務不履行の場合の、①契約解除、②損害賠償の要件に関する改正

 

1債務不履行を理由とする解除

現行民法は債務者が債務の不履行をした場合に、債務者に帰すべき事由が認められることが解除の要件ですが、新民法では債務者の責めに帰すべき事由の有無にかかわらず契約の解除が認められるようになります。

 

2債務不履行を理由とする損害賠償

 

現行民法は債務者が債務の不履行をした場合に、債務者に責に帰すべき事由が認められることが損害賠償の要件ですが、新民法も現行民法と同じく債務者に責に帰すべき事由が必要です。

 

 

八 不動産売買契約に関連する改正

 

1買戻し制度に関する改正

 

  • 現行民法のもとでの買戻し制度の内容

(2)現行民法第579条(買戻しの特約)は

「不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。」となっていますが、

改正民法のもとでは買戻しを利用しやすくするための改正が行われます。

  • 買戻し金額の規定を強行規定から任意規定に変更

買戻しは、「不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。」と規定され、この点では現行民法と同じ内容ですが、新たに、売主が提供すべき金額について「別段の合意があるときは、その合意により定めた金額」とする旨の条文が追加されました。

 

現行民法では、買戻しについて「別段の合意があるときは、その合意により定めた金額」とする旨の規定がなかったため、前記のとおり、判例において、必要費や有益費を支払わなければ買戻し出来ない特約がある場合でも売主は売買代金と契約費用さえ支払えば買戻しが出来るとされていましたが、新民法では買戻しの額を自由に合意できることとなりました。