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受任後のいわゆる「時効待」方針について

債務整理を受任した後、一部の債権者の債務が5年の消滅時効にかかる例は、当事務所でも時々あります。

 

いわゆるマニュアル本に「時効待ち」も債務整理の基本方針の一つである旨記載されており、当所も債務整理を手がけた当初この方針で債権者と先鋭的な対決をしたこともありました。

 

判例も主に信義則違反の判断で分かれていましたが、最高裁平成25年4月16日第三小法廷判決が出てからは、この方針を取ることを止め、時効間近の債権者は「寝た子を起こす」ことになるので受任せず、受任後時効が到来した債権者に対しては辞任することにしています。

 

最高裁(裁判長大橋正春・田原睦夫・岡部喜代子・大谷剛彦・寺田逸郎)は次のように述べました。

 

「本件において被上告人が採った時効待ち方針は,DがAに対して何らの措置も採らないことを一方的に期待して残債権の消滅時効の完成を待つというものであり,債務整理の最終的な解決が遅延するという不利益があるばかりか,当時の状況に鑑みてDがAに対する残債権の回収を断念し,消滅時効が完成することを期待し得る合理的な根拠があったことはうかがえないのであるから,Dから提訴される可能性を残し,一旦提訴されると法定利率を超える高い利率による遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクをも伴うものであった。
また,被上告人は,Aに対し,Dに対する未払分として29万7840円が残ったと通知していたところ,回収した過払金から被上告人の報酬等を控除してもなお48万円を超える残金があったのであるから,これを用いてDに対する残債務を弁済するという一般的に採られている債務整理の方法によって最終的な解決を図ることも現実的な選択肢として十分に考えられたといえる。
このような事情の下においては,債務整理に係る法律事務を受任した被上告人は,委任契約に基づく善管注意義務の一環として,時効待ち方針を採るのであれば,Aに対し,時効待ち方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,回収した過払金をもってDに対する債務を弁済するという選択肢があることも説明すべき義務を負っていたというべきである。
しかるに,被上告人は,平成18年7月31日頃,Aに対し,裁判所やDから連絡があった場合には被上告人に伝えてくれれば対処すること,Dとの交渉に際して必要になるかもしれないので返還する預り金は保管しておいた方が良いことなどは説明しているものの,時効待ち方針を採ることによる上記の不利益やリスクをAに理解させるに足りる説明をしたとは認め難く,また,Dに対する債務を弁済するという選択肢について説明したことはうかがわれないのであるから,上記の説明義務を尽くしたということはできない。そうである以上,仮に,Aが時効待ち方針を承諾していたとしても,それによって説明義務違反の責任を免れるものではない。」

 

田原睦夫の補足意見は,「時効待ち」について次のとおり述べています。

 

「債務整理を受任した弁護士が,その対象となる債権者に受任通知及び債務整理についての協力依頼の旨を通知した場合には,債権者は,正当な理由のない限りこれに誠実に対応し,合理的な期間は強制執行等の行動に出ることを自制すべき注意義務を負担し,それに違反する場合には不法行為責任を負うものと解されている(東京高裁平成9年6月10日判決・高裁民事判例集50巻2号231頁)こととの対応上,かかる通知を発した弁護士は,その対象となる債権者に対して,誠実に且つ衡平に対応すべき信義則上の義務を負うものというべきである。
そして,受任弁護士の債権者に対する不誠実な対応の結果,債権者との関係が悪化し通常の対応がなされていれば適宜の解決が図れたのにも拘ずその解決が遅れ,その結果,依頼者がその遅延に伴い過分な負担を負うこととなった場合には,当該弁護士は依頼者に対して債務不履行責任を負うことがあり得るといえる。
上記で述べたところからすれば,受任した弁護士が一部の債権者と示談を進め乍ら,他の債権者との交渉をすることなく「時効待ち」を行ったり,債権者と誠実な交渉を行うことなく一方的に示談条件を提示し,その条件以外では示談に応じることを拒み,他の債権者とのみ交渉を行うようなことは許容されないと言わねばならない。」

「弁護士が債務整理につき受任する場合,債務者の経済的再生の環境を整えることがその最大の責務であり,専門家としてそれに最も適した債務整理の手法を選択して,それを債務者に助言すべき義務を善管注意義務の内容として負っているものというべきである。債務者が経済的再生を図るには,債権者からの取立ての不安を払拭し,安心して自らの再生への途を踏む態勢を整えることが肝要であり,債務整理に徒に時間を費やすべきではない。かかる観点からすれば,債務整理の手段として「時効待ち」の手法を採ることは,対象債権者との関係では,時効期間満了迄債務者を不安定な状態に置くこととなり,その間に訴訟提起された場合には,多額の約定遅延損害金が生じ,又債権者が既に債務名義を取得している場合には,給与債権やその他の財産に対する差押えを受ける可能性がある等,債務者の再生に支障を来しかねないのであって,原則として適切な債務整理の手法とは言えない。かかる手法は,債権者と連絡がとれず交渉が困難であったり,債権者が強硬で示談の成立が困難であり且つ当該債権者の債権額や交渉対応からして訴の提起や差押え等債務者の再生の支障となり得る手段を採ることが通常予測されない等,特段の事情があると認められる場合に限られるべきである。そして,債権者が上場企業等一定の債権管理体制を備えている企業の場合には,一般に,債権の時効管理は厳格に行われており,超小口債権で回収費用との関係から法的手続を断念することが予想されるような場合を除き,時効まで放置することは通常あり得ないのであって,かかる債権者に対して「時効待ち」の手法を採ることは,弁護士としての善管注意義務違反に該るということができる。

 

債務整理方針の取捨選択は当所で行います。依頼者の方は安易に対応して、過払なのに分割和解してしまったり、時効なのに債務を認めて時効中断してしまったりすることのないように気をつけてください。